2本の赤線に囲まれた白地に浮かぶメープル...そう言えばカナダでは、日本以上に国旗を見る気がしませんか?
街の至る所に国旗が飾ってあったり、カフェに行けば紙コップにも国旗、道を歩けば国旗入りの服を着た人もたくさん!
日本人の感覚からすれば、至るところに国旗があるのは少し不思議に思うかもしれませんが、カナダ国旗に込められた数百年にわたる歴史と、多くの人々の想いが込められていることを知れば納得がいくかも!?
そんなわけで今日は、一緒に国旗の意味を見ていきましょう。

ちょっと長い記事なのですごく簡潔に書くと、
赤は
・イギリス植民地としてのルーツ
・世界大戦で祖国を守った兵士たちの勇気
白は
・白は平和への願い
・厳しい冬に負けぬ誠実さメープルの葉は
・英仏どちらにも偏らない公平性
を表現していたりします。
詳しく知りたい方は是非最後まで本記事を読んでみてください!
赤色は世界大戦の名残り
真っ赤っ赤、なぜカナダ国旗の赤はあれほど鮮烈なのか?

その答えは、先の世界大戦に遡ります。
当時のカナダは英連邦下の自治領(これをDominionと言う)で、独自の外交権をまだ持たない半独立国でした。
すごく簡単に言うと「君はまだ未成年だから、完全な自由はあげないよ!」と言われているような状態です。親の監督下を逃れられない未成年をイメージしてみてください。
さて、1914年8月4日、イギリスがドイツへ宣戦布告すると、カナダも自動的に第一次世界大戦へ参戦しました。なぜ自動的かというと、イギリス(保護者)が参戦するからカナダ(子ども)もつられて参戦...という具合です。
結果、カナダからは約62万人が従軍し、6 万人以上が戦死してしまいました。さらに1939年の第二次世界大戦にも参戦してしまい犠牲者を多く出しました。
そんな歴史を背負うカナダ。カナダ国旗の赤は保護者の国...英国陸軍のレッドコート(Red Coats)に由来するだけでなく、同時に戦場で流されたカナダ兵の血と勇気を象徴しています。
以上を考えるとなぜ「真っ赤っ赤、なぜカナダ国旗の赤はあれほど鮮烈なのか?」がわかる気がしますよね。
答えは...歴史の中にあった!
白色は平和と純粋性の現れ
白が国旗で使われる場合、「平和の色」とされています。カナダの場合もご多分に漏れずそうなのですが、それに加えて「誠実さ」を語る色でもあります。
「なぜ誠実さ?」というと、カナダは多文化・多言語国家だからです。

背景や言語が異なる人が一緒に住むカナダでは、肌の色や宗教にかからわず、みんなが公平であることが大事であるとされます。
政治をするうえで、「ここの政治を信頼しても大丈夫」と思われなければなりません。
そんなことから政治の透明性は欠かせませんし、透明に一番近い色と言えば白色...ということで白色が採択されました。
さらに白は、カナダを覆う長い冬を示す色でもあります。極寒のマイナス30度!雪と氷の白色ですね。
戦争に参加した歴史を赤が物語る一方で、白は「これからは平和国家として誠実に歩む」という未来志向を示します。
カナダ政府が難民などの人道的支援に積極的な理由が、この色が表す精神的バックボーンに重なって見えてきませんか?
真ん中のメープルの意味は?
カナダにはモットーがあり、「海から海へ(A Mari usque ad Mare)」という言葉で表されています。
カナダのモットー?初めて聞いた!という方も多いかと思いますが、実はカナダの国章にこのフレーズが刻まれていたりします。
日本には公式的にはモットーはありませんが、「和を以て貴しとなす」みたいに、国民みんなで目指す指向性...みたいなものをイメージしていただければ、「国が掲げるモットー」がいかなるものかなんとなく想像がつくかなと思います。

そんなわけで改めて、「海から海へ(A Mari usque ad Mare)」のモットーどおり、中央のメープルの向かって左が太平洋、右が大西洋を象徴しています。
では中央のメープルリーフは?
というと、2つの海に抱かれたカナダの大地そのものです。
このように見てみると、カナダが太平洋と大西洋を繋いでいるハブみたいに見えませんか?
次の章でも書きますが、カナダは英語圏とフランス語圏が共存・共栄しており、カナダとくには2つの言語圏の架け橋になっているとも言えますよね。
その意味を念頭に改めて国旗を見てみると、どこまでも広がる雪原の上に浮かぶ赤い葉が、英語圏・仏語圏をまとめるハブであると同時に、2つの大洋のハブであるという二重の意味が見えるはずです。
中央配置は単なるデザイン美ではなく、「東西南北どこに住んでいても、わたしたちは同じ旗の下にいる」という比喩であると言えます。
そもそもなぜメープルなの?
カナダ国旗と言えば言わずもがなメープル...のイメージですが、さて、なぜメープルなのだろう?
楓の木がたくさん生えているから、という理由もありますが、もっと歴史に根ざした理由もあるのです。

先程の章で、カナダはイギリスに属していたというお話をしたかと思います(細かく言えばカナダは段階的にイギリス支配から抜け出していきましたが、最初のステップは1867年に国内自治を持った時期でしょう)。
さて1860年、イギリスの王子がカナダを訪れるキッカケがありました。イギリス王室のシンボルと言えば薔薇ですが、当時のカナダはそれに対してシンボルがありませんでした。そこで急遽カナダ固有の植物シンボルが必要となり、候補に挙がったのがメープルだったというわけです。
秋には国土を真紅に染め、狩猟や製糖で先住民も大切にしてきた木なのでカナダを表すのにうってつけ。
その時の王子の歓迎式典で市民が胸にメープルリーフのバッジを付けたことをきっかけに、メープルリーフは瞬く間に「カナダ人らしさ」の代名詞となったのです。
よく見るカナダ国旗ですが、カナダ国旗が生まれるまでに、こんなにたくさんの物語が詰まっていたなんて、ちょっと感動しませんか?
カナダには旧国旗があった
現在みなさんが見慣れているメープルの旗が制定される前、非公式ですが、Canadian Red Ensignといって事実上の国旗として使われていたデザインがありました。
左上にユニオンジャック(イギリスのモチーフ)、右に複雑なカナダ紋章という、イギリス感が満載のデザインでした。

1960年代から独立意識が高まり、デザインを刷新したいという声が上がるようになってきました。
カナダはイギリスのルーツを持つので、イギリス系の住民からしたらイギリス色が入ったデザインの受けはいいけど、フランス系住民からは「植民地主義の名残」と見なされ、Red Ensignは不評に。
さて、どんな柄だったらみんな納得するのか!?

「英仏いずれかに偏らない新旗を」という世論が強まり、メープルリーフ案が浮上。
先の章で述べた通り、イギリス王子が来訪したときに使用され、その後の第一次世界大戦でも兵士の帽章にメープルリーフが採用され、カナダの象徴としての足場を固めることになりました。
そんなメープルリーフはイギリスの象徴でもなく、フランスの象徴でもないことから、戦後は英仏どちらの文化圏にも偏らない中立的象徴として国民に愛されるようになり、メープルLOVEはますます追い風に!
最終的に1965年2月15日をもって、Red Ensignはメープルリーフ旗に置き換えられることになり、この時点で今日みなさんがよく知っているカナダ国旗が誕生したというわけです。
国旗には国の威信がかかっているという謂れがよく分かる、国旗裏物語だったのではないでしょうか!
まとめ
カナダ国旗は、赤=過去の勇気と犠牲、白=未来志向の平和と誠実、メープルリーフ=多文化国家を束ねる中立シンボル。そして左右の赤帯が「海から海へ」と広がる壮大な国土を示します。
旗は単なる布地ではなく、歴史書であり未来への希望であることがよく分かるストーリーだったのではないでしょうか。
次にカナダ国旗を見かけたら、そこに潜む数百年分の物語をそっと思い出してみてください。皆様のカナダ留学が、きっと2倍どころか無限大に濃くなるはずです。
